『感じとる心。』

なにげに森を歩いていた。カメラを手にしていたものの、動物を捜して撮影しよう・・・とか、これを撮ってやろう・・・なんて考えずに、ただ、ただ、森を歩いていた。5月の風はさわやかで、日ざしは暖かくやさしい。そんな毎日くり返されているあたりまえのことが、とてもうれしかったりする。おおきく息をすって、のびをする。そして、また森をゆく。頭の中はカラッポだ。感じるのは、森の香りと風。そんななか、なにかを感じた。視覚とか、聴覚とかいったものではない、なにか・・・。だれかに話しかけられているような感じ。とても不思議な感じ。立ちどまり、なにげに上を見上げてみる。りっぱなトドマツの枝だのあいだから、エゾフクロウが僕をみつめていた。さっきの、不思議な感じは、このフクロウに違いない。頭の中をカラッポにして森をゆくと、ときとしてこんなふうな出会いがある。こんな日は、森のいきものたちに、受け入れられたような、なかまになれたような気がして一日中しあわせな気持ちでいっぱいだ。