今日もぼくは森の中にいます。水源の森に初雪がふりました。見なれた森もいつもとは違った景色がひろがっています。お気に入りの倒木に腰をおろしお弁当を食べていると、遠くから「フィーヨー」と繁殖期のオスジカの声が風にのって聞こえてきました。この声は自分の存在をアピールし、威嚇や牽制の役割があるのだけれど、こうしてひっそりとした森の中で聞いていると、ぼくには恋人を想う切ない声に聞こえてなりません。声はだんだんこちらへ近付いてくるようです。....と目の前に立派な角をもったオスジカが..。こんなにも近くなのに気付いていないようです。メインのカメラは三脚に付いたまま離れた所にあります。ザックからサブのカメラを取り出し、そーっと、息を止めて一枚。「カシャン」。するとシカと目と目が合いました。「ピョー!」。ゆっくりと、おおきなジャンプで森の奥へと消えて行きました。

初雪の森での出来事です。