「わくわく」と「足跡」 昨日まで富良野に雪を降らせていた雪雲は、一日遅れで僕の住む村にやってきた。雪は静かに、そして確実に積もってゆく。早速ぼくは車にカメラ、三脚、そしてあたたかい紅茶を詰め込み撮影へ出かけた。トマムリゾートのタワーを横目に通り過ぎ、ソウシュベツへと抜ける林道へと車を走らせる。しばらくは前車の「わだち」を踏んで走るが、それも3キロほどで無くなり、目の前にはできたての白い雪原が広がっている。子どもの頃からそうだけど、雪が降ると、どうしてこんなにも「わくわく」した気持ちになるのだろうか。今日もそんな気持ちで雪の雪原を行く。林道に沿って川が流れている。川はゆっくりと、静かに凍ってゆく。あと一週間もすれば、その流れは完全に氷の下になるだろう。つもり立ての雪の上には僕の車のタイヤの跡と、動物たちの足跡。足跡から動物たちの行動を想像するのはとても楽しい。今日最初に見たのはエゾリスの足跡。どうやら元気に動きまわっているようだ。その次にキタキツネ。キタキツネの足跡を追って行くと、ちいさなネズミの足跡が・・・。ネズミは無事に逃げのびたのだろうか。そしてエゾシカ。とても急な斜面を登ってゆく。そして、とても「わくわく」する足跡に出会った。それはヒグマの足跡。林道を横切り、川へと向かっている。足跡に僕の手をかさねてみると、僕の手よりひとまわり大きい。足跡は、川の手前の岩の上に前足、後ろ足をそろえたように付けられている。この岩の上で、川を渡るか渡らないかと悩んでいるヒグマの姿を想像して、おもわず笑ってしまった。川の向こう岸に足跡はつづいていた。割れた氷で傷付いたのだろうか、雪に血が付いていた。足跡の状態から、ついさっきまで、この辺りをうろついていたようだ。もしかしたら、斜面の上の方から僕のことを見ているかもしれない。そんなふうに思うと、なんだか嬉しくなってくる。この雪で、ヒグマもそろそろ冬眠の準備で忙しくなることだろう。雪が解けるまで、しばらくの間お別れだ。僕は、冬眠なんてもったいないので、ヒグマが雪の下で過ごしている間、雪の世界を思う存分楽しむのだ!
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